2007/01/15

星空に浮かぶ満月と静かなコートに落ちるバスケットボール。(その3)

※この記事を読む前に、
 星空に浮かぶ満月と静かなコートに落ちるバスケットボール。(その1)を読み、
 その後で、
 星空に浮かぶ満月と静かなコートに落ちるバスケットボール。(その2)を読むと。
 何となく、話の流れが理解できるかと思います。


僕は。この世界に何も求めない。
だから。僕はこの世界に帰らない。

けど。そんな僕の腕を引っ張ってくれる手は。あった。
たくさんの。手はあった。


ある友人。それはとても大事な友人…うん。友人とメールした。
普段。僕は彼女に弱音など絶対にはかない。
しかしこの日は。この日だけは彼女に弱音をぶつけてしまった。
鬱陶しかったろう。迷惑だったろう。
けど彼女はそんな雰囲気を一切かもし出さず。すぐにメールを返してきてくれた。

「ヒマしてたから♪」

その言葉に。僕は甘えた。
抱え込んでいるものを。背負ってしまったものを全て、数通のメールにぶつけた。
それは登山の途中小屋のような、そんな「爽快感」を僕に与えた。
決して全てが楽になったわけじゃない。
頂上まではまだ道があるように。
この迷路はまだ、闇に包まれていた。

「優希には私を含めたくさんの友達がいること忘れちゃダメだよっ」

何も言えなくて…冬。


行き場のないこの思い。この世界への恨み。
ぶつける事のできないもどかしさ。
消す事もできない情けなさ。
その辺のあやゆる感情やらなんやらを、
僕は蹴り、踏みつけ、グシャグシャにし、そして投げつけた。

何処に投げたのかもわからない。
その上、何故投げたのかさえもわからなかった。

僕が背負っていたものは消えた。
僕がかかえていたものは消えた。
僕に足りないもの?もうそんな事どうでもいい。
もうコレで楽になる。


ホッと一息つくと僕は気づく。

投げたと思われたモノは、空を切り、僕の膝元へ落ちていた事を。


この迷路にいる以上。
コイツを投げる事ができないんだ。


僕は…投げる事ができないんだ。


僕はある場所に立っていた。
体育館。誰もいないバスケットコート。
ボールを持ってただ1人。僕は立っていた。
足元には3Pライン。

(あれ?以前もこんな事あったような…。)

僕は手に持ったボールをリングに向かって投げた。
あの時はリングにも当たらなかったボール。
そのボールはまたリングには当たらなかった。
しかし。あの時とは違った。リングの中を通り、バスケットに入った。

(確かあの時。Yがボールを拾って…。)

「勝負しよ♪」
あの時と一緒だった。Yだった。
そして始まったYとのフリースロー対決。
けど、あの時とは違う。
ソレはもう1人。勝負に加わった事。
3人で今度は、3P対決をしたこと。

Yは(よくわからないが)女の子にしては3Pをよく入れる。
3Pが得意な僕でさえ、何度か負けたことがある。
3本先に入れた人が勝ちという事で、3人での対決が始まった。

以前。体育の時間にやっていた4対4でのバスケットボールの試合。
僕以外皆女の子という事で、思うようにプレーできない自分。
それどころか、「優希。リバウンド禁止」という制限までも受ける自分。
少々物足りなさを感じていた僕にとってこの勝負(特にYとの)は唯一本気でできるものだった。

この瞬間。この勝負の時。
僕の抱えていたもの。背負っていたものはどこかへ消えていってしまっていたように思う。
そして。まばゆい光に照らされていたように思う。
僕は本気で勝負をした。

2対2(僕とY)の同点。僕先行。
ゆっくりと構えて、放ったボールは。
少し低い弾道を描きながらも「スパッ」といういい音を響かせてバスケットに入った。
コレでYがシュートを外せば、僕の勝ちだ。
ソレほどまでにYとの勝負はいつも本気になる。

しかしYの放ったボールは美しい弧を描き。
バックボードに当たった後バスケットに入った。

コレが。僕がYとの勝負で本気なる所以である。

その後の一投を僕は決め、Yは外したために勝負は僕が勝った。
しかしYは屈託のない笑顔で「負けた~」と話す。
その言葉と笑顔に。俺も笑顔で「やっぱお前強いなぁ」と返す。

何かの言葉を言われたわけでもない。
何かの物をもらったわけでもない。
しかしYは。
僕の腕を掴み、引っ張ってくれて、僕に光を当ててくれた。



「また。勝負しよ」


僕は。この世界に何も求めない。
けど。この世界は居心地がいい。

学校から戻ると僕は再び光の当たらない迷路に戻っていた。
それでも。この迷路も居心地がいい所になっていた。


僕はやっと気が付いた。

この迷路からは、すぐに抜け出す事ができて、
この世界からはすぐに迷路に帰れることができるという事を。

それはまるで1日に昼と夜が必ずあるように。


僕はやっと気が付いた。

僕に足りなかったもの。
僕になかったものは。

迷路にはまった時。導いてくれる「人」でもない。
自分の生きる指針を示した「地図」や「懐中電燈」でもない。

これらのものは。僕はもう手に入れていたんだ。


─じゃあ。何故迷路で迷うのか。

─僕になかったものは。


「目的地」だったんだ。


この迷路の出口に。
僕が求める、目的地があるんだ。
だとするならばこれからも。
僕はこの迷路にはまり続けよう。
もし。この迷路から抜け出す事ができない人生を。送ろうとも。




僕はまた光の当たらないこの迷路で。タバコを1本手に取った。
冷たくなった桟に指をかけ、そっと窓を開ける。



今夜は。月。見えるかな。

(完)



 
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2007/01/13

星空に浮かぶ満月と静かなコートに落ちるバスケットボール。(その2)

※この記事を読む前に、
 星空に浮かぶ満月と静かなコートに落ちるバスケットボール。(その1) を読むと。
 何となく、話の流れが理解できるかと思います。


他人の持ち物に、いくら「優希」と名前を書いてもソレは僕の持ち物にならないように。
僕の人生もまた。誰のものにもならないのである。

とにかく動き出そう。そう思って立ち上がった体は。
水を大量に吸ってしまったバスタオル如く重かった。
もう、いっか。
寝たきりの老人のように、僕は布団に寝転んだ。
寝転びながら昔の事を思い出した。


何時誰といったのかわからないが。僕はあるお祭りに行った。
小さい頃。おそらく小学生の時だったと思うがお祭りに行った。

道の両側にはぎっしりと屋台が立ち並び。
その道を大勢の人間が通っていった。
僕はこの場所に一人だった。
歩みを止めてしまえば後ろから来た人に押されてこけてしまう。
僕は人の流れに合わせて歩いた。
しかし、その流れに会わせて歩いても。
いくら歩いても、人の波からは抜け出せなかった。

いつしか右手に持っていた綿飴はなくなり、
帯に挟んでいた団扇もなくなっていた。
一瞬にして2つのモノを無くしてしまった僕はその場に座り込む。

僕の周りには少しだけの空間ができ、
人々は僕を避けるように歩いていった。
まるで。僕のいる空間だけが別世界のように。

少し時間が経つと。人ごみの中から1つの手が現れた。
その手は僕の左腕を掴み僕を人ごみの中から出してくれた。
誰だったんだろう。その手は。
おそらく。親父か兄だと思うが。


それから。僕が迷宮・迷路に迷うたび。
誰かの手が助けてくれた。

しかし今。僕を助けてくれる手はあるか?
それ以前に。その手があったとしても僕はこの迷路から抜け出せるのか?


僕はこの迷路から抜け出せるのか?

僕はこの迷路から抜け出したいのか?


この迷路から抜け出したら、また光の溢れる世界へ帰らねばならない。
光は容赦なく僕を照らし、万人の目に入る。

この世界は、いじめを苦に自殺する子ども達が絶えない。
この世界は、力あるものが生き残り、力ないものは路頭に迷う。
この世界は、貧困に苦しんでいる国があろうとも、豊かな国は食物を棄てる。
この世界は、…金が全てだ。

この世界に帰りたい。
僕はソレを本当に望んでいるのか。

裏表のある。この世界に…。
僕は何を求めているんだ。

何を求めているんだ。


窓を開けると、雪が降っていた。
今日は…綺麗な月を拝む事はできそうにない。

僕はタバコに火を付け、目の前の砂利の敷き詰められた地を見ていた。
部屋の中からのヒカリで、僕は1本の草を見つけた。

雪が降りしきる中。
砂利が敷き詰められている地で。
そして何より、この、汚く裏表のある世界で。

その草は力強く地に根をはり。
すずめの涙ほどの栄養分を吸い取って生きていた。
タバコを灰皿に押し付け火を消して、僕は玄関へ歩いた。
シューズBOXの横に置いていた傘を取り出し、
僕はその草を覆うように傘をさして置いた。


「なぁ。どうしてお前はこんな世界で。それも1人で生きているんだ?」


応えが返ってくるはずもなかった。
しかし、そのおそらく頑張っているであろう姿は、
僕に何かを訴えているようにも思えた。


数日後。
この数日間は曇り空で月を見ることができなかった。
僕は窓を開けると空よりも先に地、あの草を見るようになっていた。
しかし、その日。いつもの場所に、草はいなかった。
ずっとさしていた傘もたたまれて、室外機の横に立てかけられていた。

僕は恨んだ。
この世界を恨んだ。
草一本生きていけない世界。
そんなものに何を望もうか。

僕は。この世界には帰りたくない。そう思った。



 
2007/01/11

星空に浮かぶ満月と静かなコートに落ちるバスケットボール。(その1)

僕に足りないものはなんだろう…。
そんな事を考える事が最近増えている。
答えは簡単には出てこない。

こー考えていると。
僕はまるで。
出口の見えない。光の当たらない迷路。
に閉じ込められているような感覚に陥る。

先日。ある友人から贈り物が届いた。
学校から帰るとポストに入っていた水色の少し大きめの封筒。
すぐさまハサミを取り出し、僕はその封筒を開けた。
中に入っていたのは一冊の小さな本。
しかし、その小さな本には心を打つ言葉がたくさん書かれていた。
少なくとも。僕の心を満たすには十分だった。

本の最後には友人の直筆でメッセージが書かれてあった。
僕は声にならない声を出して泣いた。
僕の事を心配してくれて、僕の為に何かをしてくれる人がいる。
ただ。コレが一番嬉しかった。


クイズやなぞなぞには必ず答えというものが存在する。
Qができればすなわちそこに、Aができるのである。
では。
人生に答えはあるのだろうか。
人生の答えは?というQに、Aはあるのだろうか。
本を贈ってきてくれた友人に聞いてみた。

友人「死に際に、俺頑張ったなぁ↑って思える人生が一番だと思う」

と。返ってきた。

光の当たらないこの迷路に、少し明かりが灯ったようにも思えた。


しかし。
この迷路は、僕がどう動いていいのかさえ教えてくれない。
それ以前に。僕を動かそうともしなかった。
そして僕自身も。動こうとしなかったのである。
動こうとしなかったといったら。語弊があるかもしれない。
とにかく僕の身体は動かなかったのである。
動けなかったのか、それとも。動かなかったかは別として。


年明け前。2つの試験がうちの学科で行われた。
1つ目は37点満点の36点という、驚異的な成績を残した。
意気揚々と僕は2つ目の試験の結果を見に行った。

再試験該当者8名。(名簿の赤印)







またかよ…


コレが今。僕を苦しめているもの。
前期からの試験不合格科目。8科目。


昔から勉強は嫌いだった。
漢字練習帳を平仮名練習帳にしてみたり。
歴史のテストに芸能人の名前を書いてみたり。
嫌いな先生の試験問題は、白紙で出してみたり。
昔から勉強は嫌いだった。

でも短大に入って。専門の勉強をするのは嫌いではなかった。
好きでもなかったけど。
だから自分なりに頑張った。
頑張った結果が。コレである。


次は絶対受かってやる。


僕はタバコを吸う。
いつから吸うようになったのか。よく覚えていない。
高校時代から吸っていたような気もするし。
2007年に入ったつい最近吸い始めたような気もする。

タバコ

コイツを吸う時は。難しい事なんて考えない。
迷路から抜け出せるような気がするのである。
何も考える事もなく。ただ空を見る。
街のヒカリのせいで、星たちは全く見えない。
見えるのは綺麗な月のみ。

しかし結局はタバコの火は消えてしまうもので。
3分を過ぎてしまったウルトラマンが星へ帰っていくように。
僕もまた、光が当たらない迷路へ。戻ってしまうのである。
不安や心配などが多重に交差しあうあの迷路へ。


このままこの迷路で腐っちまうんだと思った。
むしろ。このままこの迷路で腐っちまえ。そう思った。

今の僕に将来なんてあるのか?
ないのなら…もう何も考えなくていいじゃないか。
僕に足りないものはいっぱいありすぎるんだ。


このままこの迷路で腐っちまうんだと思った。
でも。この迷路から抜け出したい。そうも思った。

今の僕には将来なんてないのかもしれない。
けど。明日。もしかしたら10日後。僕に将来が現れるかもしれない。
まだ見ぬ未来を知りたい。だから僕はこの迷路から抜け出したい。


誰か。僕をこの迷路から引っ張り出してください。
誰か。僕に光を与えてください。


もがけばもがくほど。この迷路の闇は深くなるだけであった。


僕はまた逃げるようにタバコに手を伸ばし、窓を開けて火を付けた。

ふと闇、夜空を見上げた。


今夜も綺麗な月が出ていた。



 
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